ブログ
院長先生の手取りを増やす! 医療法人で活用できる「最強の節税対策」5選
第4回 医療法人向けブログ
院長先生の手取りを増やす!
医療法人で活用できる「最強の節税対策」5選
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第3回では、持分あり・持分なし医療法人の違いをお伝えしました。今回は、院長先生が最も関心を持たれるテーマ——「医療法人化した後、どうやって手取りを増やすか」についてお伝えします。
医療法人には個人クリニックにはない節税の手段が複数あります。ただし、どれも「適切な設計・運用」が前提です。税務調査でも見られやすいポイントを含めて、実務的に解説します。
医療法人の節税対策5選 一覧
|
No. |
節税対策 |
ポイント |
|
① |
役員報酬の最適化 |
所得を法人と個人に分散し、全体の税負担を下げる |
|
② |
役員退職金の準備 |
退職時に法人の損金に算入。退職所得控除で受取時も有利 |
|
③ |
社宅の活用 |
法人名義で住宅を借り、院長先生の家賃を経費化 |
|
④ |
旅費規程の整備 |
出張手当を非課税で支給。所得税・社会保険料も節減 |
|
⑤ |
家族への役員報酬・給与 |
所得を家族に分散し、世帯全体の税負担を最適化 |
各節税対策の詳細
節税対策 ① 役員報酬の最適化
法人と個人の所得を分散して、全体の税率を下げる
個人クリニックでは、利益のすべてに所得税(最大55%)がかかります。医療法人化すると、利益の一部を「法人に残す」「役員報酬として受け取る」に分けて設計できるため、全体の税負担を抑えられます。
役員報酬は毎月同額でなければならない(定期同額給与)というルールがあります。年度途中での変更は原則認められないため、事業年度開始から3ヶ月以内に適切な金額を設定することが重要です。
注意
役員報酬が「不相当に高額」と判断された場合、超過部分は法人の経費として認められません。同規模・同業種の相場を踏まえた設定が必要です。
節税対策 ② 役員退職金の準備
引退時の大きな節税効果。早めの原資準備が鍵
医療法人では、院長先生(役員)が退職する際に支給する退職金を、退職時に法人の損金(経費)として計上することができます。なお、損金に算入されるのは退職金を実際に支給した時点であり、積み立て段階では損金になりません。
退職金を受け取る院長先生の側では退職所得控除が適用されるため、同額を給与で受け取るよりも税負担が大幅に軽減されます。法人・個人の双方にとって有利な仕組みです。
退職金の原資をどう準備するかは別途設計が必要です。法人契約の生命保険や内部留保として資金を積み立てておくケースが多いですが、積み立て段階での経費計上の可否は原資の種類により異なりますので、税理士との連携が欠かせません。退職金の適正額は「最終報酬月額×在職年数×功績倍率」で算定されます。
|
項目 |
個人クリニック(小規模企業共済) |
医療法人(役員退職金) |
|
準備の上限 |
年間84万円まで(掛金) |
上限なし(適正額の範囲内) |
|
損金算入のタイミング |
掛金支払い時に所得控除 |
退職金を支給した時点で損金算入 |
|
受取時の課税 |
退職所得として軽課税 |
退職所得として軽課税 |
|
原資の準備方法 |
共済への掛金 |
内部留保・法人契約の生命保険等 |
注意
退職金が「不相当に高額」と認定されると、超過部分は損金不算入となります。功績倍率は一般的に3倍以内が目安とされていますが、業種・規模・役職に応じた合理的な設定が必要です。
節税対策 ③ 社宅の活用
法人名義で住宅を借り上げ、住居費を法人で負担する
法人名義で住宅(社宅)を借り上げ、院長先生に貸し付けると、法人が支払う家賃は法人の経費となります。院長先生個人は、通達に基づく一定の計算式で算出した「賃貸料相当額」を法人に支払うことで、その差額については給与として課税されません。つまり、院長先生が手取りから家賃を支払う代わりに、法人が家賃の大部分を負担する形となるため、実質的に院長先生の住居費の負担が軽減されます。
【豪華社宅に該当する場合の注意】
院長先生が入居する社宅については、「豪華社宅」に該当するかどうかの判定が重要です。床面積が240㎡を超えるものや、プールや役員個人の嗜好を著しく反映した設備がある場合などは豪華社宅とみなされます。豪華社宅に該当すると、通達に基づく一定の計算式による賃貸料相当額ではなく、実際の市場家賃(時価)が賃貸料相当額となるため、節税効果がほとんど得られません。物件選定の段階から税理士に確認することをおすすめします。
ポイント
賃貸料相当額(院長先生の自己負担分)を法人に支払わないと、家賃全額が給与課税されます。また、豪華社宅に該当しないか事前に確認してください。
節税対策 ④ 旅費規程の整備
出張手当を非課税で受け取る
法人が旅費規程を定めると、出張時の日当(出張手当)を非課税で役員・従業員に支給できます。この手当は法人の経費になる一方、受け取る側の所得税・社会保険料の対象にもなりません。
学会参加・研修・施設見学・税理士事務所への訪問なども「出張」として認められる場合があります。適切な旅費規程を整備することで、実費精算以上の恩恵が得られます。
注意
日当の金額が「社会通念上相当な金額」を超えると、超過部分は給与として課税されます。同業種・同規模の相場を参考に、過大にならないよう設定してください。
節税対策 ⑤ 家族への役員報酬・給与
所得を家族に分散し、世帯全体の税負担を最適化
個人クリニックでも配偶者や家族に「専従者給与」を支払うことはできますが、医療法人では家族を役員または従業員として迎え、役員報酬や給与を支払う形になります。それぞれ勤務実態に応じた金額を設定することで、院長先生一人に集中していた所得を分散し、世帯全体の税負担を下げることができます。
たとえば、院長先生の課税所得が2,000万円の場合と、配偶者へ500万円分散した場合では、世帯全体の税負担が数十〜百万円単位で変わるケースもあります。
注意
勤務実態のない家族への役員報酬・給与は、税務調査で否認されるリスクがあります。実際に業務に従事していることが前提であり、職務内容・勤務時間・報酬額の整合性が重要です。
まとめ
5つの節税対策を整理すると、以下のポイントが共通しています。
◆ いずれも「適切な設計・運用・書類整備」があって初めて有効 → 場当たり的な節税は税務調査でのリスクを高めます
◆ 組み合わせることで効果が最大化する → 1つだけでなく複数の対策を組み合わせて全体を設計することが重要です
◆ 専門家と連携した継続的な見直しが必要 → 税制改正や法人の状況変化に合わせて毎年チェックしましょう
ポイント
節税は「知っているかどうか」だけでなく「正しく使えているかどうか」が重要です。医療法人の節税設計は、医療業界に精通した税理士へのご相談をおすすめします。
次回(第5回)は、「医療法人のMS法人活用術!メリットと税務上の注意点」をお届けします。
次回:第5回「医療法人の『MS法人』活用術!メリットと税務上の注意点」
やっぱり税金は払いたくないよね
決算前になると、どの経営者からも必ず聞く言葉です。
その気持ち、痛いほどよく分かります。
自分で必死に稼いだお金をごっそり持っていかれるのは、誰だって嫌なものです。
だからこそ、巷には「車を買おう」「保険に入ろう」といった節税テクニックが溢れています。
でも、ちょっとだけ冷静になってみてほしいのです。
あなたの会社には「会社規模を〇倍にする」「組織を仕組み化する」といった、明確な【目的地】がありませんか?
現在地からその目的地へ進むロードマップを描いたとき、どうしても避けて通れない関門があります。
それが「手元の利益を積み上げる」ということです。
新しい広告を打つにも、右腕を雇うにも、銀行から大きな融資を引き出すにも、会社の器(自己資本)がペラペラでは一歩も前に進めません。
そして、日本で利益を積み上げる以上、どこかで必ず税金は払わなきゃいけない。
これが動かせない財務のルールです。
納税とは、国に取られる罰金ではありません。
会社が次のステージへと進むための「入場料」だと考えましょう。
色々な策を労して、税金を潰した気になってる経営者の皆さん。
あなたが潰しているのは税金じゃなくて、会社の信用、会社の将来かもしれませんよ。
Growth-Side(成長の隣に)。
あなたの目的地に最短でたどり着くためのルートを、ロジックで一緒に組み立てていきましょう。
部門会計やってますか?(4/4)
「よし、じゃあ売上を2倍にするために受注を増やそう!」と決意したとき、
次に解くべき問題は会社によって全く異なります。
実は社内を見渡せば、すぐにでも手を打てる身近な問題がたくさん埋もれているはずなのです。
そもそも自社の存在が知られていないなら、まずは広告を打って新規の引き合いを増やすのが先かもしれない。
あるいは、せっかくいる営業マンが楽なルート営業ばかりに逃げていて新規開拓をサボっているなら、
その評価や動き方を変えるだけで売上は伸びていくかもしれない。
どこにボトルネックがあり、何から順番にパズルを解いていくべきか。
聞き覚えのあるこれらの企業としてのありきたりな行動は、
正確な現在地把握とロードマップ作成の結果導き出されるべきものだったのです。
「手元にお金が残らない」
もしそんな悩みの中にいるなら、一人で頭を抱えるのは終わりです。
1部門しかなくても、部門会計をしてみましょう。
問題の原因も、解決策も、見えてくるかもしれませんよ。
おわり
部門会計やってますか?(3/4)
現場は単体で2,000万円もの利益を稼いでいる。
なのに、会社全体では400万円しか残らない。
原因は、現場の営業利益が少ないからでも、社長の見積もりや仕入れ先選びが甘いからでもありませんでした。
現場が稼いだ2,000万に対して、後ろに控える1,600万円の【本部コスト】が、
想定する現場の売上規模にまだ追いついていない構造が原因だったのです。
部門会計を行っていない試算表を見ていると「現場の営業利益が少ない」と勘違いし、
相場を無視した値上げを強行して顧客を失うか、優秀な現場を叩いて職人たちを辞めさせ、会社を壊してしまいます。
悪いのは現場ではない。用意した本部の器に対して、今の現場の規模が小さすぎるだけなのです。
この構造が分かった時、打つべき作戦はコストカットでも、無理な値上げでもありません。
これこそが、「何が何でも、強引に売上を追わなきゃいけない局面」です。
「本部コストが想定している規模に合わせて、現場の売上を2倍にスケールさせて追いつかせること」。
これしかありません。
固定費である本部コストは、売上が増えても変わらないからです。
粗利がしっかり出ている現場を信じて、そのボリュームを最大化するためにアクセルを踏む。
これが正しい戦略です。
では、売上を増やすと決意したとき、私たちはまず何から手を付けるべきなのでしょうか?
つづく
医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違いとは?
第3回 医療法人向けブログ
医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違いとは?
それぞれのメリット・注意点を税理士が解説
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第2回では、法人化のタイミングを見極める3つの基準をお伝えしました。「では、医療法人を設立しようと思ったら、どんな種類があるの?」——今回はそのご質問にお答えします。
医療法人には「持分あり」と「持分なし」の2種類があり、税務・承継・解散時の取り扱いが大きく異なります。承継や将来の出口戦略にも直結する重要なテーマですので、ぜひ最後までお読みください。
そもそも「持分」とは何か?
医療法人の「持分」とは、出資者が法人に対して持つ財産的な権利のことです。法人を解散したときや出資者が脱退するときに、持分に応じた財産の払い戻しを受けられる権利を指します。
わかりやすく言えば、持分がある医療法人は「出資者のもの」という側面を持ち、持分がない医療法人は「社会のもの(非営利)」という性格が強くなります。
持分あり vs 持分なし 比較表
|
項目 |
持分あり医療法人 |
持分なし医療法人 |
|
新規設立 |
不可(平成19年以降は設立できない) |
可能(現在設立できる唯一の形態) |
|
取得方法 |
M&A(既存法人の出資持分の購入) |
新規設立または持分なし法人のM&A |
|
出資者の権利 |
持分に応じた財産権あり |
財産権なし |
|
解散時の残余財産 |
出資者に払い戻される |
国・地方公共団体等に帰属 |
|
承継時の課税 |
持分評価額に応じて 贈与税・相続税が発生するリスクあり |
持分がないため 原則として課税リスクなし |
|
内部留保の蓄積 |
出資者への評価増につながる |
法人内に蓄積(個人に戻らない) |
|
事業承継の柔軟性 |
持分の売買・贈与で対応可能 (ただし税務リスクあり) |
理事長交代のみで承継可能 |
持分あり医療法人について
特徴と取得方法
平成19年の医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立は認められなくなりました。現在この形態の医療法人を取得する方法は、M&A(既存の持分あり法人の出資持分を購入すること)に限られます。
現在も多くの持分あり医療法人が存在しており、院長先生の高齢化や後継者不在を背景にM&Aの機会は増加しています。分院展開や事業拡大を考えている先生にとっては、選択肢の一つになり得ます。
メリット
◆ 解散時に出資額に応じた財産の払い戻しを受けられる
◆ 持分の売買により、院長先生が引退時に「出口」を得やすい
◆ 既存法人のM&Aであるため、スタッフ・患者・設備をそのまま引き継げる
注意点・リスク
最大のリスクは承継時の税負担です。長年運営してきた医療法人は内部留保が蓄積されているため、持分の評価額が出資額を大きく上回っているケースがあります。この場合、後継者への持分の贈与・相続の際に多額の贈与税・相続税が発生するリスクがあります。
注意
持分あり医療法人を保有されている先生は、「認定医療法人制度」を活用して持分なし法人へ移行することで、相続税・贈与税のリスクを軽減できる場合があります。早めのご相談をおすすめします。
持分なし医療法人について
特徴
現在、新規に設立できる医療法人はすべて「持分なし」です。出資者が持分という財産権を持たない代わりに、法人の資産は法人自体に帰属し、社会への還元を前提とした非営利性の高い形態です。
メリット
◆ 持分がないため、後継者への承継時に贈与税・相続税が原則として発生しない
◆ 理事長を交代するだけでスムーズに承継が可能
◆ 法人内に利益を蓄積しやすく、設備投資・分院展開の財源として活用できる
注意点
解散時の残余財産は院長先生個人には戻らず、国・地方公共団体等に帰属します。また、法人内に蓄積した財産を個人が自由に引き出すことはできないため、院長先生自身の「出口」を別途設計しておく必要があります(役員退職金の活用など)。
まとめ
2つの形態を整理すると、以下のようになります。
|
|
持分あり(M&Aで取得) |
持分なし(新規設立) |
|
向いている先生 |
既存法人をM&Aで取得したい先生・将来の出口(売却)を重視する先生 |
これから法人化を検討している先生・承継時の税負担を抑えたい先生 |
|
主な注意点 |
承継時の贈与税・相続税リスク、M&A費用 |
解散時の残余財産は個人に戻らない、出口設計が必要 |
ポイント
現在から医療法人化を目指す場合は持分なし法人の新規設立が基本です。既存の持分あり法人をお持ちの先生は、認定医療法人制度による移行も含めて早めに対策を検討しましょう。
次回(第4回)は、医療法人で活用できる節税対策をテーマにお届けします。「院長先生の手取りを増やす!医療法人で活用できる最強の節税対策5選」です。お楽しみに!
次回:第4回「院長先生の手取りを増やす!医療法人で活用できる『最強の節税対策』5選」
