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医療法人の「MS法人」活用術!
第5回 医療法人向けブログ
医療法人の「MS法人」活用術!
メリットと税務上の注意点を税理士が解説
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第4回では、医療法人で活用できる節税対策5選をお伝えしました。今回は、医療法人の経営をさらに発展させる手法として活用されている「MS法人」についてお伝えします。
MS法人は活用次第で大きなメリットがある一方、税務上のリスクも伴う手法です。仕組みをしっかり理解した上で、適切に運用することが重要です。
MS法人とは何か?
MS法人とは「メディカルサービス法人」の略で、医療法人と密接に関係する営利法人(株式会社・合同会社等)のことを指します。医療法人は医療法により利益の配当が禁止されているため、MS法人を活用することで医療周辺業務を営利法人側に担わせる仕組みです。
具体的には、医療法人がMS法人に対して業務委託・不動産賃貸・物品販売などの取引を行い、MS法人側で利益を計上します。MS法人は株式会社等の営利法人であるため、配当や役員報酬などの形で院長先生やご家族に利益を還元することができます。
MS法人でできること 活用例
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業務の種類 |
内容 |
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不動産の賃貸・管理 |
クリニックの建物・駐車場をMS法人が所有または管理し、医療法人に賃貸する |
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医療機器のリース |
MS法人が医療機器を購入し、医療法人にリースする |
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医療事務・給食・清掃等の業務委託 |
医療事務・受付・給食・清掃・洗濯など、医療行為に該当しない業務をMS法人が受託する ※ドクター・看護師等の医療行為は医療法上委託不可 |
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医薬品・医療材料の販売 |
MS法人が仕入れ、医療法人に販売する(要件あり) |
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ご家族への役員報酬・給与 |
MS法人の役員・従業員として勤務するご家族への報酬・給与の支払い |
MS法人活用のメリット
① 所得の分散による税負担の軽減
医療法人の利益の一部をMS法人に移転することで、医療法人・MS法人・院長先生個人の3つに所得を分散することができます。それぞれの税率が下がることで、グループ全体の税負担を軽減できる可能性があります。
② 家族への所得分散
MS法人の役員・従業員として家族を迎え入れ、勤務実態に応じた役員報酬や給与を支払うことができます。医療法人単体では難しかった所得分散が、MS法人を介することでより柔軟に設計できる場合があります。
③ 配当による利益還元
医療法人は利益の配当が禁止されていますが、MS法人(株式会社等)であれば株主への配当が可能です。院長先生やご家族が株主となることで、法人の利益を配当として受け取ることができます。
④ 事業展開の柔軟性
医療法人は医療法による事業範囲の制限がありますが、MS法人は営利法人であるため、介護・美容・健康食品販売など周辺事業への展開が可能です。医療法人と連携することでグループ全体の事業を広げることができます。
税務上の注意点
① 取引価格の適正性
MS法人と医療法人の取引は、第三者間と同様の適正な価格(時価)で行うことが大原則です。医療法人側が不当に高い費用を支払っている場合、その超過部分は損金として認められないリスクがあります。不動産賃料・業務委託料等はいずれも市場価格を根拠とした設定が必要です。
注意
取引価格が不当に高額と判断されると、超過部分が医療法人の損金不算入とされるだけでなく、役員への利益供与として認定されるリスクもあります。
② 業務の実態
MS法人が医療法人から報酬を受け取るためには、実際に業務を遂行していることが必須です。名目だけの業務委託契約や、実態のない取引は税務上否認されます。契約書の整備・業務実績の記録・請求書・支払いの証跡をしっかり残すことが重要です。
注意
業務実態がないと判断された場合、支払った委託料等は全額損金不算入となり、追徴課税の対象となります。形式だけでなく実態を伴った運用が不可欠です。
③ 医療法上の規制
【理事長・役員のMS法人役員兼任について】
医療法上、医療法人の理事長はMS法人(営利法人)の役員を兼任することが原則として認められていません。医療法人の非営利性を確保するための規制であり、兼任が発覚した場合は都道府県から指導・是正を求められる可能性があります。MS法人の役員には、院長先生以外のご家族や信頼できる方を就任させるケースが一般的です。なお、都道府県によって運用が異なる場合もあるため、所轄庁への確認が必要です。
【医療行為の業務委託について】
MS法人に委託できる業務は、医療行為に該当しない業務に限られます。医療事務・受付・給食・清掃・洗濯・駐車場管理などは委託可能ですが、ドクターの診療行為や看護師の看護行為などの医療行為そのものは、医療法上MS法人への委託が認められていません。委託できる業務の範囲を事前にしっかり確認することが重要です。
【その他の規制】
医薬品・医療材料の販売など、薬機法上の規制がある業務については、MS法人が取り扱える範囲に制限があります。また、医療法人とMS法人の関係が「実質的な支配関係」にあると判断された場合、行政から指導を受ける可能性もあります。
注意
MS法人の活用にあたっては、税務上のリスクだけでなく、医療法・薬機法等の法規制への対応が不可欠です。設立前に税理士・弁護士等の専門家に相談することを強くおすすめします。
MS法人を設立・活用する際のポイント
◆ 目的を明確にする → 「何のためにMS法人を設立するか」を明確にし、実態に合った事業内容・取引を設計する
◆ 取引価格の根拠を文書化する → 不動産鑑定・市場調査・見積書等をもとに、適正価格の根拠を残す
◆ 契約書・議事録を整備する → 業務委託契約書・賃貸借契約書・取締役会議事録等を適切に作成・保管する
◆ MS法人単体でも利益が出る設計にする → 医療法人からの取引のみに依存した「赤字法人」はリスクが高い。独立した事業実態を持つことが望ましい
◆ 税理士・弁護士等の専門家と連携する → 税務・法務両面のリスクを事前に確認し、継続的な見直しを行う
まとめ
MS法人は、適切に設計・運用することで医療グループ全体の税負担軽減・事業拡大に有効な手法です。しかし、実態を伴わない取引や不当な価格設定は税務上のリスクを招きます。
ポイント
MS法人の活用は「実態ある取引」「適正な価格」「しっかりとした書類整備」の3点が大前提です。設立前に必ず専門家へご相談ください。
次回(第6回)は、「医療法人の役員報酬はどう決める?変更するタイミングと税務上のルール」をお届けします。
次回:第6回「医療法人の『役員報酬』はどう決める?変更するタイミングと税務上のルール」
院長先生の手取りを増やす! 医療法人で活用できる「最強の節税対策」5選
第4回 医療法人向けブログ
院長先生の手取りを増やす!
医療法人で活用できる「最強の節税対策」5選
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第3回では、持分あり・持分なし医療法人の違いをお伝えしました。今回は、院長先生が最も関心を持たれるテーマ——「医療法人化した後、どうやって手取りを増やすか」についてお伝えします。
医療法人には個人クリニックにはない節税の手段が複数あります。ただし、どれも「適切な設計・運用」が前提です。税務調査でも見られやすいポイントを含めて、実務的に解説します。
医療法人の節税対策5選 一覧
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No. |
節税対策 |
ポイント |
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① |
役員報酬の最適化 |
所得を法人と個人に分散し、全体の税負担を下げる |
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② |
役員退職金の準備 |
退職時に法人の損金に算入。退職所得控除で受取時も有利 |
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③ |
社宅の活用 |
法人名義で住宅を借り、院長先生の家賃を経費化 |
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④ |
旅費規程の整備 |
出張手当を非課税で支給。所得税・社会保険料も節減 |
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⑤ |
家族への役員報酬・給与 |
所得を家族に分散し、世帯全体の税負担を最適化 |
各節税対策の詳細
節税対策 ① 役員報酬の最適化
法人と個人の所得を分散して、全体の税率を下げる
個人クリニックでは、利益のすべてに所得税(最大55%)がかかります。医療法人化すると、利益の一部を「法人に残す」「役員報酬として受け取る」に分けて設計できるため、全体の税負担を抑えられます。
役員報酬は毎月同額でなければならない(定期同額給与)というルールがあります。年度途中での変更は原則認められないため、事業年度開始から3ヶ月以内に適切な金額を設定することが重要です。
注意
役員報酬が「不相当に高額」と判断された場合、超過部分は法人の経費として認められません。同規模・同業種の相場を踏まえた設定が必要です。
節税対策 ② 役員退職金の準備
引退時の大きな節税効果。早めの原資準備が鍵
医療法人では、院長先生(役員)が退職する際に支給する退職金を、退職時に法人の損金(経費)として計上することができます。なお、損金に算入されるのは退職金を実際に支給した時点であり、積み立て段階では損金になりません。
退職金を受け取る院長先生の側では退職所得控除が適用されるため、同額を給与で受け取るよりも税負担が大幅に軽減されます。法人・個人の双方にとって有利な仕組みです。
退職金の原資をどう準備するかは別途設計が必要です。法人契約の生命保険や内部留保として資金を積み立てておくケースが多いですが、積み立て段階での経費計上の可否は原資の種類により異なりますので、税理士との連携が欠かせません。退職金の適正額は「最終報酬月額×在職年数×功績倍率」で算定されます。
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項目 |
個人クリニック(小規模企業共済) |
医療法人(役員退職金) |
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準備の上限 |
年間84万円まで(掛金) |
上限なし(適正額の範囲内) |
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損金算入のタイミング |
掛金支払い時に所得控除 |
退職金を支給した時点で損金算入 |
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受取時の課税 |
退職所得として軽課税 |
退職所得として軽課税 |
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原資の準備方法 |
共済への掛金 |
内部留保・法人契約の生命保険等 |
注意
退職金が「不相当に高額」と認定されると、超過部分は損金不算入となります。功績倍率は一般的に3倍以内が目安とされていますが、業種・規模・役職に応じた合理的な設定が必要です。
節税対策 ③ 社宅の活用
法人名義で住宅を借り上げ、住居費を法人で負担する
法人名義で住宅(社宅)を借り上げ、院長先生に貸し付けると、法人が支払う家賃は法人の経費となります。院長先生個人は、通達に基づく一定の計算式で算出した「賃貸料相当額」を法人に支払うことで、その差額については給与として課税されません。つまり、院長先生が手取りから家賃を支払う代わりに、法人が家賃の大部分を負担する形となるため、実質的に院長先生の住居費の負担が軽減されます。
【豪華社宅に該当する場合の注意】
院長先生が入居する社宅については、「豪華社宅」に該当するかどうかの判定が重要です。床面積が240㎡を超えるものや、プールや役員個人の嗜好を著しく反映した設備がある場合などは豪華社宅とみなされます。豪華社宅に該当すると、通達に基づく一定の計算式による賃貸料相当額ではなく、実際の市場家賃(時価)が賃貸料相当額となるため、節税効果がほとんど得られません。物件選定の段階から税理士に確認することをおすすめします。
ポイント
賃貸料相当額(院長先生の自己負担分)を法人に支払わないと、家賃全額が給与課税されます。また、豪華社宅に該当しないか事前に確認してください。
節税対策 ④ 旅費規程の整備
出張手当を非課税で受け取る
法人が旅費規程を定めると、出張時の日当(出張手当)を非課税で役員・従業員に支給できます。この手当は法人の経費になる一方、受け取る側の所得税・社会保険料の対象にもなりません。
学会参加・研修・施設見学・税理士事務所への訪問なども「出張」として認められる場合があります。適切な旅費規程を整備することで、実費精算以上の恩恵が得られます。
注意
日当の金額が「社会通念上相当な金額」を超えると、超過部分は給与として課税されます。同業種・同規模の相場を参考に、過大にならないよう設定してください。
節税対策 ⑤ 家族への役員報酬・給与
所得を家族に分散し、世帯全体の税負担を最適化
個人クリニックでも配偶者や家族に「専従者給与」を支払うことはできますが、医療法人では家族を役員または従業員として迎え、役員報酬や給与を支払う形になります。それぞれ勤務実態に応じた金額を設定することで、院長先生一人に集中していた所得を分散し、世帯全体の税負担を下げることができます。
たとえば、院長先生の課税所得が2,000万円の場合と、配偶者へ500万円分散した場合では、世帯全体の税負担が数十〜百万円単位で変わるケースもあります。
注意
勤務実態のない家族への役員報酬・給与は、税務調査で否認されるリスクがあります。実際に業務に従事していることが前提であり、職務内容・勤務時間・報酬額の整合性が重要です。
まとめ
5つの節税対策を整理すると、以下のポイントが共通しています。
◆ いずれも「適切な設計・運用・書類整備」があって初めて有効 → 場当たり的な節税は税務調査でのリスクを高めます
◆ 組み合わせることで効果が最大化する → 1つだけでなく複数の対策を組み合わせて全体を設計することが重要です
◆ 専門家と連携した継続的な見直しが必要 → 税制改正や法人の状況変化に合わせて毎年チェックしましょう
ポイント
節税は「知っているかどうか」だけでなく「正しく使えているかどうか」が重要です。医療法人の節税設計は、医療業界に精通した税理士へのご相談をおすすめします。
次回(第5回)は、「医療法人のMS法人活用術!メリットと税務上の注意点」をお届けします。
次回:第5回「医療法人の『MS法人』活用術!メリットと税務上の注意点」
医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違いとは?
第3回 医療法人向けブログ
医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違いとは?
それぞれのメリット・注意点を税理士が解説
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第2回では、法人化のタイミングを見極める3つの基準をお伝えしました。「では、医療法人を設立しようと思ったら、どんな種類があるの?」——今回はそのご質問にお答えします。
医療法人には「持分あり」と「持分なし」の2種類があり、税務・承継・解散時の取り扱いが大きく異なります。承継や将来の出口戦略にも直結する重要なテーマですので、ぜひ最後までお読みください。
そもそも「持分」とは何か?
医療法人の「持分」とは、出資者が法人に対して持つ財産的な権利のことです。法人を解散したときや出資者が脱退するときに、持分に応じた財産の払い戻しを受けられる権利を指します。
わかりやすく言えば、持分がある医療法人は「出資者のもの」という側面を持ち、持分がない医療法人は「社会のもの(非営利)」という性格が強くなります。
持分あり vs 持分なし 比較表
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項目 |
持分あり医療法人 |
持分なし医療法人 |
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新規設立 |
不可(平成19年以降は設立できない) |
可能(現在設立できる唯一の形態) |
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取得方法 |
M&A(既存法人の出資持分の購入) |
新規設立または持分なし法人のM&A |
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出資者の権利 |
持分に応じた財産権あり |
財産権なし |
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解散時の残余財産 |
出資者に払い戻される |
国・地方公共団体等に帰属 |
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承継時の課税 |
持分評価額に応じて 贈与税・相続税が発生するリスクあり |
持分がないため 原則として課税リスクなし |
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内部留保の蓄積 |
出資者への評価増につながる |
法人内に蓄積(個人に戻らない) |
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事業承継の柔軟性 |
持分の売買・贈与で対応可能 (ただし税務リスクあり) |
理事長交代のみで承継可能 |
持分あり医療法人について
特徴と取得方法
平成19年の医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立は認められなくなりました。現在この形態の医療法人を取得する方法は、M&A(既存の持分あり法人の出資持分を購入すること)に限られます。
現在も多くの持分あり医療法人が存在しており、院長先生の高齢化や後継者不在を背景にM&Aの機会は増加しています。分院展開や事業拡大を考えている先生にとっては、選択肢の一つになり得ます。
メリット
◆ 解散時に出資額に応じた財産の払い戻しを受けられる
◆ 持分の売買により、院長先生が引退時に「出口」を得やすい
◆ 既存法人のM&Aであるため、スタッフ・患者・設備をそのまま引き継げる
注意点・リスク
最大のリスクは承継時の税負担です。長年運営してきた医療法人は内部留保が蓄積されているため、持分の評価額が出資額を大きく上回っているケースがあります。この場合、後継者への持分の贈与・相続の際に多額の贈与税・相続税が発生するリスクがあります。
注意
持分あり医療法人を保有されている先生は、「認定医療法人制度」を活用して持分なし法人へ移行することで、相続税・贈与税のリスクを軽減できる場合があります。早めのご相談をおすすめします。
持分なし医療法人について
特徴
現在、新規に設立できる医療法人はすべて「持分なし」です。出資者が持分という財産権を持たない代わりに、法人の資産は法人自体に帰属し、社会への還元を前提とした非営利性の高い形態です。
メリット
◆ 持分がないため、後継者への承継時に贈与税・相続税が原則として発生しない
◆ 理事長を交代するだけでスムーズに承継が可能
◆ 法人内に利益を蓄積しやすく、設備投資・分院展開の財源として活用できる
注意点
解散時の残余財産は院長先生個人には戻らず、国・地方公共団体等に帰属します。また、法人内に蓄積した財産を個人が自由に引き出すことはできないため、院長先生自身の「出口」を別途設計しておく必要があります(役員退職金の活用など)。
まとめ
2つの形態を整理すると、以下のようになります。
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持分あり(M&Aで取得) |
持分なし(新規設立) |
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向いている先生 |
既存法人をM&Aで取得したい先生・将来の出口(売却)を重視する先生 |
これから法人化を検討している先生・承継時の税負担を抑えたい先生 |
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主な注意点 |
承継時の贈与税・相続税リスク、M&A費用 |
解散時の残余財産は個人に戻らない、出口設計が必要 |
ポイント
現在から医療法人化を目指す場合は持分なし法人の新規設立が基本です。既存の持分あり法人をお持ちの先生は、認定医療法人制度による移行も含めて早めに対策を検討しましょう。
次回(第4回)は、医療法人で活用できる節税対策をテーマにお届けします。「院長先生の手取りを増やす!医療法人で活用できる最強の節税対策5選」です。お楽しみに!
次回:第4回「院長先生の手取りを増やす!医療法人で活用できる『最強の節税対策』5選」
個人クリニックと医療法人の違いとは?
池田大志税理士事務所 税理士 村上 裕
第1回 医療法人向けブログ
個人クリニックと医療法人の違いとは?
法人化のメリット・デメリットを税理士が解説
はじめまして。池田大志税理士事務所の税理士、村上 裕(むらかみ ゆたか)です。
名古屋を拠点に、クリニック・医療法人の税務・経営支援を専門とする税理士です。医療法人特有のルールを熟知した「医療に強い税理士」として、法人化・節税・事業承継まで幅広くサポートしています。
クリニックの経営が軌道に乗ってくると、頭をよぎるのが「医療法人化」という選択肢。「節税になると聞いたけど、実際どう違うの?」という疑問をお持ちの先生も多いのではないでしょうか。
今回は、個人クリニックと医療法人の違いを、メリット・デメリットに絞ってシンプルに解説します!
そもそも何が変わる?【個人 vs 医療法人 比較表】
一番の違いは「経営の主体」です。個人から法人(組織)に変わることで、税金やルールが大きく変わります。
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項目 |
個人クリニック |
医療法人 |
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経営の主体 |
院長先生個人 |
法人(組織) |
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税金の種類 |
所得税(累進課税) |
法人税+役員報酬への所得税 |
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最高税率 |
最大55%(住民税込) |
法人税 約33%+役員報酬部分の所得税 |
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退職金 |
小規模企業共済で積み立て可能 |
役員退職金として法人の経費計上が可能 |
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社会保険 |
任意加入が可能 |
スタッフ全員が強制加入 |
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資金の自由度 |
収入をそのまま生活費に使える |
法人資金と個人資金は明確に分離 |
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事業承継 |
相続・贈与が複雑 |
持分の有無により異なる(詳細は本文) |
医療法人化のメリット
① 税負担の最適化
個人クリニックの場合、すべての利益に所得税(累進課税・最大55%)がかかります。
医療法人化すると、法人の利益には法人税(約33%前後)が課され、院長先生個人の収入は「役員報酬」として受け取ります。役員報酬には所得税がかかりますが、役員報酬の金額を適切に設定することで、全体の税負担を個人事業主よりも抑えられるケースが多くなります。
② 退職金の活用
個人クリニックでも、小規模企業共済(月額最大7万円・年間84万円まで全額所得控除)を活用することで、将来の退職金を積み立てながら節税が可能です。
一方、医療法人では役員退職金を法人の経費として計上できます。退職金には退職所得控除が適用されるため、受け取り時の税負担も低く抑えられます。小規模企業共済の積立上限を超える規模での退職金準備が可能になる点が、医療法人ならではの大きなメリットです。
③ 事業承継のしやすさ
個人クリニックの場合、院長先生が亡くなるとクリニックはいったん閉院となり、後継者が改めて開設手続きをする必要があります。資産・患者・スタッフの引き継ぎも複雑です。
医療法人は法人格が継続するため、理事長を交代するだけでクリニックをそのまま存続できます。ただし、承継のしやすさは医療法人の「種類」によって大きく異なります。
持分あり医療法人(平成19年以前に設立)
出資者(院長先生)が出資額に応じた「持分」を持ちます。後継者への承継は持分を贈与・売買することで行います。ただし、持分の評価額が高くなっている場合、後継者に多額の贈与税・相続税が発生するリスクがあります。
持分なし医療法人(平成19年以降に新設)
現在、新たに設立できる医療法人はすべて「持分なし」です。持分という概念がないため、後継者への相続税・贈与税の問題は発生しません。ただし、解散時の残余財産は国や地方公共団体等に帰属するため、院長先生個人には戻ってきません。
注意
持分あり医療法人は現在も多数存在しており、承継・解散・持分なしへの移行(認定医療法人制度の活用)など、状況に応じた対策が必要です。お早めにご相談ください。
医療法人化のデメリット
① お金の自由度が下がる
院長先生であっても、法人の資金を私的に引き出すことはできません。生活費は「役員報酬」として毎月受け取る形になります。資金管理がより厳密になります。
② 社会保険の負担が増える
スタッフ全員の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務となります。法人が保険料の半分を負担するため、人件費コストが増加します。これが法人化の判断において最大のコストとなるケースも多いです。
③ 行政手続きのコストがかかる
医療法人は毎年、決算後に都道府県へ決算届を提出する義務があります。また、役員の任期(通常2年)ごとに登記手続きが必要となり、司法書士への報酬なども発生します。個人クリニックと比べ、毎年一定の管理コストがかかる点は覚えておきましょう。
まとめ:法人化すべきタイミングは?
医療法人化は「すべてのクリニックにとっての正解」ではありません。
ポイント
増える社会保険料・管理コストよりも、役員報酬の設定や退職金活用による節税メリットの方が大きくなるタイミングで法人化を検討しましょう。一般的には、個人の課税所得が1,000万円を超えてくると法人化のメリットが出やすいといわれています。
ただし、スタッフの人数・給与水準・分院展開の有無など、クリニックの状況によって試算結果は大きく変わります。次回(第2回)は、具体的な「法人化の見極め基準3つ」をお伝えします!
次回:第2回「うちのクリニックはいつ法人化すべき?見極めるための3つの基準」
