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医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違いとは?
第3回 医療法人向けブログ
医療法人の「持分あり」と「持分なし」の違いとは?
それぞれのメリット・注意点を税理士が解説
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第2回では、法人化のタイミングを見極める3つの基準をお伝えしました。「では、医療法人を設立しようと思ったら、どんな種類があるの?」——今回はそのご質問にお答えします。
医療法人には「持分あり」と「持分なし」の2種類があり、税務・承継・解散時の取り扱いが大きく異なります。承継や将来の出口戦略にも直結する重要なテーマですので、ぜひ最後までお読みください。
そもそも「持分」とは何か?
医療法人の「持分」とは、出資者が法人に対して持つ財産的な権利のことです。法人を解散したときや出資者が脱退するときに、持分に応じた財産の払い戻しを受けられる権利を指します。
わかりやすく言えば、持分がある医療法人は「出資者のもの」という側面を持ち、持分がない医療法人は「社会のもの(非営利)」という性格が強くなります。
持分あり vs 持分なし 比較表
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項目 |
持分あり医療法人 |
持分なし医療法人 |
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新規設立 |
不可(平成19年以降は設立できない) |
可能(現在設立できる唯一の形態) |
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取得方法 |
M&A(既存法人の出資持分の購入) |
新規設立または持分なし法人のM&A |
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出資者の権利 |
持分に応じた財産権あり |
財産権なし |
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解散時の残余財産 |
出資者に払い戻される |
国・地方公共団体等に帰属 |
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承継時の課税 |
持分評価額に応じて 贈与税・相続税が発生するリスクあり |
持分がないため 原則として課税リスクなし |
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内部留保の蓄積 |
出資者への評価増につながる |
法人内に蓄積(個人に戻らない) |
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事業承継の柔軟性 |
持分の売買・贈与で対応可能 (ただし税務リスクあり) |
理事長交代のみで承継可能 |
持分あり医療法人について
特徴と取得方法
平成19年の医療法改正により、持分あり医療法人の新規設立は認められなくなりました。現在この形態の医療法人を取得する方法は、M&A(既存の持分あり法人の出資持分を購入すること)に限られます。
現在も多くの持分あり医療法人が存在しており、院長先生の高齢化や後継者不在を背景にM&Aの機会は増加しています。分院展開や事業拡大を考えている先生にとっては、選択肢の一つになり得ます。
メリット
◆ 解散時に出資額に応じた財産の払い戻しを受けられる
◆ 持分の売買により、院長先生が引退時に「出口」を得やすい
◆ 既存法人のM&Aであるため、スタッフ・患者・設備をそのまま引き継げる
注意点・リスク
最大のリスクは承継時の税負担です。長年運営してきた医療法人は内部留保が蓄積されているため、持分の評価額が出資額を大きく上回っているケースがあります。この場合、後継者への持分の贈与・相続の際に多額の贈与税・相続税が発生するリスクがあります。
注意
持分あり医療法人を保有されている先生は、「認定医療法人制度」を活用して持分なし法人へ移行することで、相続税・贈与税のリスクを軽減できる場合があります。早めのご相談をおすすめします。
持分なし医療法人について
特徴
現在、新規に設立できる医療法人はすべて「持分なし」です。出資者が持分という財産権を持たない代わりに、法人の資産は法人自体に帰属し、社会への還元を前提とした非営利性の高い形態です。
メリット
◆ 持分がないため、後継者への承継時に贈与税・相続税が原則として発生しない
◆ 理事長を交代するだけでスムーズに承継が可能
◆ 法人内に利益を蓄積しやすく、設備投資・分院展開の財源として活用できる
注意点
解散時の残余財産は院長先生個人には戻らず、国・地方公共団体等に帰属します。また、法人内に蓄積した財産を個人が自由に引き出すことはできないため、院長先生自身の「出口」を別途設計しておく必要があります(役員退職金の活用など)。
まとめ
2つの形態を整理すると、以下のようになります。
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持分あり(M&Aで取得) |
持分なし(新規設立) |
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向いている先生 |
既存法人をM&Aで取得したい先生・将来の出口(売却)を重視する先生 |
これから法人化を検討している先生・承継時の税負担を抑えたい先生 |
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主な注意点 |
承継時の贈与税・相続税リスク、M&A費用 |
解散時の残余財産は個人に戻らない、出口設計が必要 |
ポイント
現在から医療法人化を目指す場合は持分なし法人の新規設立が基本です。既存の持分あり法人をお持ちの先生は、認定医療法人制度による移行も含めて早めに対策を検討しましょう。
次回(第4回)は、医療法人で活用できる節税対策をテーマにお届けします。「院長先生の手取りを増やす!医療法人で活用できる最強の節税対策5選」です。お楽しみに!
次回:第4回「院長先生の手取りを増やす!医療法人で活用できる『最強の節税対策』5選」
個人クリニックと医療法人の違いとは?
池田大志税理士事務所 税理士 村上 裕
第1回 医療法人向けブログ
個人クリニックと医療法人の違いとは?
法人化のメリット・デメリットを税理士が解説
はじめまして。池田大志税理士事務所の税理士、村上 裕(むらかみ ゆたか)です。
名古屋を拠点に、クリニック・医療法人の税務・経営支援を専門とする税理士です。医療法人特有のルールを熟知した「医療に強い税理士」として、法人化・節税・事業承継まで幅広くサポートしています。
クリニックの経営が軌道に乗ってくると、頭をよぎるのが「医療法人化」という選択肢。「節税になると聞いたけど、実際どう違うの?」という疑問をお持ちの先生も多いのではないでしょうか。
今回は、個人クリニックと医療法人の違いを、メリット・デメリットに絞ってシンプルに解説します!
そもそも何が変わる?【個人 vs 医療法人 比較表】
一番の違いは「経営の主体」です。個人から法人(組織)に変わることで、税金やルールが大きく変わります。
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項目 |
個人クリニック |
医療法人 |
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経営の主体 |
院長先生個人 |
法人(組織) |
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税金の種類 |
所得税(累進課税) |
法人税+役員報酬への所得税 |
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最高税率 |
最大55%(住民税込) |
法人税 約33%+役員報酬部分の所得税 |
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退職金 |
小規模企業共済で積み立て可能 |
役員退職金として法人の経費計上が可能 |
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社会保険 |
任意加入が可能 |
スタッフ全員が強制加入 |
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資金の自由度 |
収入をそのまま生活費に使える |
法人資金と個人資金は明確に分離 |
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事業承継 |
相続・贈与が複雑 |
持分の有無により異なる(詳細は本文) |
医療法人化のメリット
① 税負担の最適化
個人クリニックの場合、すべての利益に所得税(累進課税・最大55%)がかかります。
医療法人化すると、法人の利益には法人税(約33%前後)が課され、院長先生個人の収入は「役員報酬」として受け取ります。役員報酬には所得税がかかりますが、役員報酬の金額を適切に設定することで、全体の税負担を個人事業主よりも抑えられるケースが多くなります。
② 退職金の活用
個人クリニックでも、小規模企業共済(月額最大7万円・年間84万円まで全額所得控除)を活用することで、将来の退職金を積み立てながら節税が可能です。
一方、医療法人では役員退職金を法人の経費として計上できます。退職金には退職所得控除が適用されるため、受け取り時の税負担も低く抑えられます。小規模企業共済の積立上限を超える規模での退職金準備が可能になる点が、医療法人ならではの大きなメリットです。
③ 事業承継のしやすさ
個人クリニックの場合、院長先生が亡くなるとクリニックはいったん閉院となり、後継者が改めて開設手続きをする必要があります。資産・患者・スタッフの引き継ぎも複雑です。
医療法人は法人格が継続するため、理事長を交代するだけでクリニックをそのまま存続できます。ただし、承継のしやすさは医療法人の「種類」によって大きく異なります。
持分あり医療法人(平成19年以前に設立)
出資者(院長先生)が出資額に応じた「持分」を持ちます。後継者への承継は持分を贈与・売買することで行います。ただし、持分の評価額が高くなっている場合、後継者に多額の贈与税・相続税が発生するリスクがあります。
持分なし医療法人(平成19年以降に新設)
現在、新たに設立できる医療法人はすべて「持分なし」です。持分という概念がないため、後継者への相続税・贈与税の問題は発生しません。ただし、解散時の残余財産は国や地方公共団体等に帰属するため、院長先生個人には戻ってきません。
注意
持分あり医療法人は現在も多数存在しており、承継・解散・持分なしへの移行(認定医療法人制度の活用)など、状況に応じた対策が必要です。お早めにご相談ください。
医療法人化のデメリット
① お金の自由度が下がる
院長先生であっても、法人の資金を私的に引き出すことはできません。生活費は「役員報酬」として毎月受け取る形になります。資金管理がより厳密になります。
② 社会保険の負担が増える
スタッフ全員の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務となります。法人が保険料の半分を負担するため、人件費コストが増加します。これが法人化の判断において最大のコストとなるケースも多いです。
③ 行政手続きのコストがかかる
医療法人は毎年、決算後に都道府県へ決算届を提出する義務があります。また、役員の任期(通常2年)ごとに登記手続きが必要となり、司法書士への報酬なども発生します。個人クリニックと比べ、毎年一定の管理コストがかかる点は覚えておきましょう。
まとめ:法人化すべきタイミングは?
医療法人化は「すべてのクリニックにとっての正解」ではありません。
ポイント
増える社会保険料・管理コストよりも、役員報酬の設定や退職金活用による節税メリットの方が大きくなるタイミングで法人化を検討しましょう。一般的には、個人の課税所得が1,000万円を超えてくると法人化のメリットが出やすいといわれています。
ただし、スタッフの人数・給与水準・分院展開の有無など、クリニックの状況によって試算結果は大きく変わります。次回(第2回)は、具体的な「法人化の見極め基準3つ」をお伝えします!
次回:第2回「うちのクリニックはいつ法人化すべき?見極めるための3つの基準」
