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後継者がいない医療法人の選択肢。
第10回 医療法人向けブログ【最終回】
後継者がいない医療法人の選択肢。
クリニックの「M&A(第三者承継)」という解決策を税理士が解説
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第9回では親族への事業承継をテーマにお伝えしました。今回は全10回シリーズの最終回として、「後継者がいない場合の選択肢——医療法人のM&A(第三者承継)」について解説します。
「子供は医師にならなかった」「信頼できる後継者が見つからない」——そのような場合でも、M&Aという形で地域医療を守りながらハッピーリタイアできる可能性があります。
医療法人のM&Aとは
医療法人のM&A(第三者承継)とは、現理事長が他の医師・医療法人・医療グループ等に対して法人の経営権を譲渡することです。親族内承継と異なり、後継者を身内に限定しないため、選択肢が広がります。
医療業界では近年、院長先生の高齢化・後継者不足を背景にM&Aの件数が増加傾向にあります。廃院という選択に比べ、スタッフの雇用継続・患者の診療継続・地域医療の維持という観点からも、M&Aは社会的に意義のある選択肢です。
M&Aのメリット
現理事長(売り手)側のメリット
◆ スタッフ・患者を守れる → 長年一緒に働いたスタッフの雇用、かかりつけ患者の診療を継続させることができる
◆ 対価(譲渡収入)を得られる → 持分あり法人では出資持分の売買対価として、引退後の生活資金を確保できる
◆ 地域医療への貢献を継続できる → クリニックが存続することで、長年築いてきた地域への貢献を引き継いでもらえる
◆ 廃院の手間・コストを避けられる → 廃院手続きは複雑で費用もかかる。M&Aなら法人を存続させたまま引退できる
買い手側のメリット
◆ 既存の患者・スタッフ・設備をそのまま引き継げる → ゼロから開業するよりも早期に安定した経営基盤を得られる
◆ 保険医療機関としての指定をそのまま引き継げる → 新規開業では別途申請が必要な保険診療の指定が継続される
◆ 地域での認知度・ブランドを活用できる → 長年地域に根ざしたクリニックの信頼・知名度を引き継げる
M&Aの基本的な流れ
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ステップ |
内容 |
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① |
M&Aの検討・意思決定 |
「いつ・いくらで・誰に」を概ね整理する。税理士・M&A仲介会社に相談を開始する |
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② |
法人の価値算定(バリュエーション) |
財務状況・患者数・設備・立地等をもとに法人の評価額を算定する |
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③ |
買い手候補の探索・交渉 |
M&A仲介会社等を通じて買い手候補を探し、条件交渉を行う |
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④ |
基本合意書の締結 |
譲渡価格・スケジュール等の主要条件について書面で合意する |
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⑤ |
デューデリジェンス(DD) |
買い手が法人の財務・法務・税務等を詳細に調査する |
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⑥ |
最終契約の締結 |
持分譲渡契約書等を締結する |
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⑦ |
理事長交代・各種手続き |
都道府県への届出・登記変更・保険医療機関の届出等を行う |
M&Aに関わる税務の基本
持分あり医療法人の場合
出資持分を売買する場合、現理事長(売り手)には譲渡所得税が課税されます。譲渡益(売却価格−取得費)に対して、原則として20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)が課税されます。
取得費は出資時の金額が基準となりますが、設立から長年経過した法人では取得費が低く・売却価格が高くなるケースが多く、譲渡益が大きくなる傾向があります。事前に税理士とともに試算しておくことが重要です。
持分なし医療法人の場合
持分なし医療法人には財産的な持分がないため、出資持分の売買という形のM&Aはできません。第三者承継を行う場合は、理事長交代のみとなり、現理事長への金銭的な対価は原則として発生しません。このため、持分なし法人では引退前に役員退職金として計画的に資金を確保しておくことが特に重要です。
注意
M&Aに際しては、医療法・都道府県の許認可・保険医療機関の届出など、税務以外の手続きも多岐にわたります。税理士のみならず、医療専門のM&A仲介会社・弁護士・司法書士とチームを組んで進めることをおすすめします。
廃院との比較
後継者がいない場合の選択肢として廃院もありますが、M&Aと比較すると以下の通りです。
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比較項目 |
廃院 |
M&A(第三者承継) |
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スタッフの雇用 |
原則として全員解雇 |
雇用継続が可能(条件による) |
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患者の診療 |
他院へ転院が必要 |
継続して診療を受けられる |
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現理事長の収入 |
対価なし(清算のみ) |
持分あり法人は譲渡対価を得られる |
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手続きの複雑さ |
解散・清算手続きが必要 |
M&A手続きが必要(仲介会社が支援) |
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地域医療への影響 |
クリニックがなくなる |
クリニックが存続する |
まとめ 〜全10回を振り返って〜
後継者がいない場合でも、M&Aという選択肢によって、スタッフ・患者・地域医療を守りながら引退することができます。廃院を選ぶ前に、ぜひM&Aの可能性を検討してください。
ポイント
M&Aは「売れるクリニック」の条件を整えることが重要です。患者数・収益力・スタッフ体制・設備状況などが評価のポイントになります。早めに準備を始めることで、より良い条件での承継が実現しやすくなります。
シリーズ全10回を通じて、医療法人の税務・経営に関する重要なテーマをお伝えしてきました。
「自院の状況に当てはめるとどうなるのか」「具体的にどう動けばいいのか」といったご相談は、池田税理士事務所へお気軽にお問い合わせください。医療法人・クリニック経営に精通した税理士が、先生の状況に合わせた最適なアドバイスをご提供します。
全10回のシリーズをお読みいただき、ありがとうございました。
池田税理士事務所 税理士 村上 裕
