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2026-10-13 10:00:00

子供にクリニックを引き継ぎたい。

第9回 医療法人向けブログ

子供にクリニックを引き継ぎたい。

医療法人の「事業承継」で知っておくべき税金と手続きを税理士が解説

池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム

こんにちは、税理士の村上です。

第8回では交際費の取り扱いをお伝えしました。今回は、多くの院長先生が将来の課題として抱えている「事業承継」について解説します。

「いつかは子供に引き継ぎたい」とお考えの先生も多いと思います。しかし医療法人の承継は、早めに準備を始めないと選択肢が狭まるテーマです。税務・手続きの両面から、わかりやすく解説します。

医療法人の事業承継とは

医療法人の事業承継とは、院長先生(現理事長)から後継者へ法人の経営権・運営を引き継ぐことです。個人クリニックと異なり、医療法人は法人格が継続するため、廃院・再開設は不要です。主に「理事長の交代」と「出資持分の承継(持分あり法人の場合)」という2つの手続きが伴います。

後継者として想定されるのは、お子様・配偶者・勤務医として働く親族など様々ですが、医療法人の理事長は原則として医師または歯科医師であることが必要です(都道府県知事の認可が必要な場合もあります)。

 

持分あり・持分なしで承継の流れが異なる

持分あり医療法人の承継

持分あり医療法人では、出資持分の贈与・売買・相続によって財産的権利を後継者に移転します。同時に理事長を交代する手続きも必要です。

問題となるのが持分評価額に対する税負担です。長年運営してきた法人は内部留保が蓄積しており、持分の評価額が出資額を大きく上回るケースが多くあります。この場合、贈与では贈与税、相続では相続税が多額になる可能性があります。

承継方法

概要

税務上の注意点

生前贈与

現理事長が存命中に後継者へ持分を贈与する

持分評価額に対して贈与税が課税される。評価額が高い場合は多額の税負担となる

売買(有償譲渡)

後継者が持分を時価で購入する

後継者に購入資金が必要。現理事長には譲渡所得課税の可能性あり

相続

現理事長の死亡により後継者が相続する

相続税の課税対象。評価額次第では多額の相続税が発生するリスクあり

 

注意

持分あり医療法人の承継では、「認定医療法人制度」を活用することで、出資者が持分を放棄した際の贈与税・相続税の課税が猶予・免除される場合があります。ただし要件・手続きが複雑なため、早めに当事務所へご相談ください。

【認定医療法人制度以外の移行方法】

認定医療法人制度を利用しない場合でも、出資者が持分を自主的に放棄し、定款変更を行うことで持分なし法人へ移行することができます。ただしこの場合、放棄した持分相当額が法人への贈与とみなされ、法人に対してみなし贈与課税が生じる可能性があります。いずれの方法も税務・法務両面の検討が必要ですので、早めに当事務所へご相談ください。

持分なし医療法人の承継

持分なし医療法人には財産的な持分がないため、理事長の交代手続きのみで承継が完結します。持分の贈与税・相続税といった問題が生じないため、承継の税務リスクは大幅に低くなります。

ただし、院長先生個人の「出口」(引退後の収入確保)については別途設計が必要です。役員退職金の活用が最も有効な手段のひとつとなります。

 

理事長交代の手続き

持分の有無にかかわらず、理事長を交代する際は以下の手続きが必要です。

順序

手続き

内容・注意点

①

後継者を理事に選任

社員総会で後継者を理事として選任する。後継者が医師・歯科医師であることが原則要件

②

理事会で理事長を互選

理事の中から理事長を互選する(理事会決議)

③

都道府県への届出・認可

理事長変更の届出が必要。都道府県によっては認可が必要な場合もある

④

登記の変更

法務局にて役員変更登記を行う(司法書士に依頼するケースが多い)

⑤

各種名義変更

保険医療機関の指定・銀行口座・各種契約等の名義変更手続き

 

早めに準備すべき理由

医療法人の事業承継は、「決めてから動く」では間に合わないケースが多くあります。以下の観点から、早期着手が重要です。

◆     持分評価額の対策に時間がかかる → 内部留保の圧縮・認定医療法人制度の活用には数年単位の計画が必要

◆     後継者の育成・研修に時間がかかる → 後継者が理事として法人運営を学ぶ期間を十分に確保する

◆     役員退職金の原資準備に時間がかかる → 退職金の水準を逆算し、早期から計画的に内部留保・保険を活用する

◆     都道府県への手続きに時間がかかる → 認可申請・届出の審査期間を見込んで、余裕を持ったスケジュールを組む

 

まとめ

医療法人の事業承継は、持分の有無・後継者の状況・法人の財務状況によって取るべき対策が大きく異なります。

 ポイント 

「まだ先の話」と思っているうちに選択肢が狭まります。後継者候補が決まっている先生は、できるだけ早い段階で承継計画の全体像を描き、税理士・司法書士等の専門家とともに準備を進めましょう。

次回(第10回)は、「後継者がいない医療法人の選択肢——クリニックのM&A(第三者承継)という解決策」をお届けします。

次回:第10回「後継者がいない医療法人の選択肢。クリニックの『M&A(第三者承継)』という解決策」