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うちのクリニックはいつ法人化すべき?
池田大志税理士事務所 税理士 村上 裕
第2回 医療法人向けブログ
うちのクリニックはいつ法人化すべき?
見極めるための「3つの基準」を税理士が解説
池田税理士事務所 税理士 村上 | 医療法人専門コラム
こんにちは、税理士の村上です。
第1回では、個人クリニックと医療法人の違いをお伝えしました。「メリットはわかった。でも、うちはいつ法人化すればいいの?」——今回はその疑問にお答えします。
法人化のタイミングを見誤ると、かえってコスト増になるケースもあります。私が普段の相談で使っている「3つの判断基準」をもとに、わかりやすく解説します。
法人化を検討する3つの基準
基準① 個人の課税所得が1,000万円を超えてきた
最もわかりやすい目安が「所得の水準」です。個人の課税所得が1,000万円を超えてくると、所得税・住民税の合計税率が約43%に達します。一方、医療法人の法人税率は約33%前後。この差が大きくなるほど、法人化による節税効果が出やすくなります。
ただし、法人化後は社会保険料の法人負担分や、決算・登記などの管理コストも発生します。「節税額>増加コスト」となるかどうか、個別のシミュレーションが必須です。
ポイント
課税所得が年間1,000万円を超えたら、法人化の試算を検討するタイミングです。
基準② スタッフの人数・給与水準を確認する
社会保険(健康保険・厚生年金)の適用については、医療法人は規模にかかわらず強制適用事業所となります。一方、個人クリニックは常時勤務するスタッフの人数によって扱いが異なります。法人はスタッフの保険料の約半額を負担するため、スタッフが多いほどコスト増加が大きくなります。
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項目 |
個人クリニック |
医療法人 |
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社会保険の適用 |
常時5人未満:任意適用 常時5人以上:強制適用 |
規模にかかわらず強制適用 |
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法人の保険料負担 |
なし(任意適用の場合) 半額負担(強制適用の場合) |
保険料の約半額を法人が負担 |
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コスト増加の目安 |
- |
常勤スタッフ数・給与水準による |
【医師国保について】
個人クリニックの場合、院長先生やスタッフが医師国民健康保険組合(医師国保)に加入しているケースが多くあります。医師国保は所得に関わらず保険料が定額であるため、収入が高い先生ほど割安になるメリットがあります。
しかし医療法人化すると、医師国保から協会けんぽ(健康保険)へ切り替わることが一般的です(医師国保の規約によっては法人でも継続できる場合もありますが、要確認)。協会けんぽは所得に応じた保険料となるため、院長先生の報酬水準によっては保険料負担が大きく増加することがあります。この点も法人化コストの試算に必ず含めましょう。
【法人化後の管理コストについて】
法人化後は毎年、都道府県への決算届の提出が義務付けられます。また、役員の任期(通常2年)ごとの役員変更登記や、資産総額が変わった際の資産総額の登記なども必要です。これらの手続きには司法書士費用等が発生し、個人クリニックにはない管理コストとなります。
ポイント
社会保険料(医師国保からの切り替えコスト含む)・管理コストの増加分を試算し、節税メリットと比較することが重要です。
基準③ 将来の展望(分院・承継・退職金)を見据える
所得水準だけでなく、将来のビジョンも法人化の重要な判断材料です。次のいずれかに当てはまる場合、法人化を早めに検討する価値があります。
◆ 分院展開を考えている → 個人事業主では分院(複数の診療所)を開設することはできません。分院展開には医療法人化が必須となります
◆ 退職金を大きく積み立てたい → 小規模企業共済の上限(年84万円)を超える積み立てが可能になります
◆ お子様への承継を考えている → 早めに法人化しておくと、承継・相続対策の選択肢が広がります
◆ 家族に給与を支払いたい → 個人事業主の場合は「専従者給与」として支払えますが、法人化すると家族も役員報酬または給与として支払う形になり、勤務実態に応じてより柔軟な設定が可能になります
ポイント
節税効果だけでなく、将来のビジョンと照らし合わせて法人化のタイミングを判断しましょう。
3つの基準チェックリスト
以下の項目に多く当てはまるほど、法人化を検討するタイミングが近づいています。
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□ |
個人の課税所得が年間1,000万円前後またはそれ以上ある |
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□ |
スタッフへの社会保険コスト増加分を上回る節税効果が見込める |
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□ |
分院展開・事業承継・退職金積み立てなど将来の展望がある |
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□ |
家族への給与支払いや役員退職金の活用を検討している |
まとめ
法人化の最適なタイミングは、クリニックごとに異なります。「所得が増えてきた」「将来の展望が固まってきた」と感じたら、まずは専門家への相談がおすすめです。
注意
法人化の手続きは都道府県への申請が必要で、準備から設立まで通常6ヶ月〜1年程度かかります。「やろうと思ったら早めに動く」ことが大切です。
次回(第3回)は、「持分あり・持分なし医療法人の違いと、いま設立するならどちらか?」をテーマにお届けします。
次回:第3回「医療法人の『持分あり』と『持分なし』の違いとは?いま設立するならどっち?」
