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2026-06-05 09:15:00

「仕事が順調」がまさかの危険信号!?

独立して、最初は順調に仕事が回っていたのに、ある時期を境にピタッと成長が止まってしまう。

それどころか、急に資金繰りが苦しくなって先行きが見えなくなってしまう……。

実は、多くの中小企業がぶつかるこの現象には、ある共通した「原因」があります。

それは、仕事が順調なときに、経営者が知らず知らずのうちに「動物園のライオン状態」になってしまっていることです。

今回はそんなお話。

 

たとえば、建築業界などでよくある、こんなケースを想像してみてください。

若い頃から腕が良く、持ち前の人柄もあって、先輩の独立を機に「お前に仕事を回してやるから、後輩たちを連れて一本立ちしろよ」

と背中を押されて独立した一人の職人社長がいます。

独立して3年間は、驚くほど順調。

先輩の会社から途切れることなく現場が回ってくるため、自分で営業なんてしなくても十分に食っていけたのです。

月収は会社員の頃の倍になり、銀行からの借入もできて新しいトラックや機材も買えました。

社長は「経営なんて、現場をきっちり回していれば勝手についてくるもんだ」と確信し、

自分が「百獣の王」にでもなったような全能感すら抱くようになります。

ところが4年目、突然の転機が訪れます。

元請けの体制が変わり、その先輩の会社からの発注が半分に激減してしまったのです。

慌てて、社長は片っ端から知り合いに電話をかけ、飛び込み営業らしきこともやってみましたが、うまいこと仕事が取れません。

どこも自前の職人で手一杯か、手間ばかりかかって利益が出ない安月給の現場しか提示してくれない。

気がつけば、通帳の残高は毎月の給料と外注費の支払いで、みるみるうちに減っていきます。

「腕もいい、身体も動く。なのに、なんでこんなに仕事が取れないんだ……?」

夜の事務所で一人頭を抱えて初めて、社長は気づくのです。

仕事が順調だったあの3年間は、経営者として成長していたわけではなかった。

用意してもらった「動物園の檻」の中で、毎日降ってくる肉(仕事)をもらいながら、

自分で獲物を狩る能力を、じわじわと失い続けていただけだったんだ、と。

ビジネスにおいて、商品やサービスが売れるまでには「認知してもらい、他社と比較された上で、選ばれる」という、

一番面倒で泥臭い努力のプロセスが絶対に必要です。

以前、経営の本質は「因数分解」であり、ビジネスの本質は「誰かの代わりに面倒くさい苦労を一手に引き受けること」だとお話ししました。

このケースで言えば、ビジネスで一番大変な「集客の仕組み(=野生の狩り)」を、すべて元請けという「檻」に代行してもらっていたわけです。

檻の中にいれば、自分で動かなくても仕事が降ってきます。

だから安全だし、自分は腕がいいから選ばれているんだと錯覚してしまう。

ですが、腕(技術)が良いのは、市場全体から見れば、選ばれるための「決定打」ではなく、あって当たり前の「前提条件」にすぎません。

看板を失ってサバンナ(剥き出しの市場)に放り出された瞬間、自力でお客さんを開拓する武器が何一つ手元にないことに気づいても、もう手遅れになってしまうのです。

そして、この「動物園のライオン状態」が本当に恐ろしい牙をむくのは、

会社が好調なまま、次の世代(2代目)に代替わりをするとき

です。

先代の社長が作った「檻(これまでの強力な取引先やルート)」が頑丈であればあるほど、

2代目の若いライオンたちは、生まれたときから毎日決まった時間に肉が降ってくるのが当たり前の環境で育ちます。

自分で獲物を探したことも、命がけで仕留めたこともない。

つまり、「一度も自力で狩り(新規集客)をしたことがない世代」です。

実は、事業承継の現場で「先代社長と後継者の親子がめちゃくちゃモメる原因」も、まさにここにあります。

先代社長からすれば、

「今まで俺がこの檻を必死に守ってきたから、毎日エサ(売上)が来るんだ。わざわざリスクを冒して外へ出ていく必要なんてない。余計なコストをかけるな!」

というのが、会社のことを想うがゆえの正論です。

でも、これから未来を生きる後継者からすれば、

「今はよくても、もしこの檻の扉が壊れたら、僕たちは全員サバンナで飢え死にする。

今のうちに、お金と時間をかけてでも自力で狩りをする練習(新規事業やマーケティングへの投資)をさせてくれ!」

という、生き残りをかけた必死の叫びなんですよね。

お互いに会社を良くしたいという想いは同じなのに、見ている時間軸と危機感がまったく違う。

「待っていればエサが来るから動くな」という先代と、

「このままサバンナに放り出されたらヤバい」と思っている後継者。

この構造のズレに気づけなければ、揉めないほうがどうかしているんです。

先代の引退や時代の変化によって、ある日突然檻の扉が壊れてしまった瞬間、狩りのやり方を知らない若いライオンたちだけで荒野に放り出される。

これこそが、儲かっていたはずの2代目の会社が、代替わりして数年で一瞬にして跡形もなく潰れてしまう本当の正体です。

だからこそ、僕たち税理士が「事業承継」をお手伝いするときは、

単に自社の株価を引き下げて税金を安くする、といった表面的な手続きだけで終わらせることは絶対にしません。

大切なのは、先代がこれまで感覚と馬力で守ってきた「泥臭い狩りの技術」をきれいに紐解き、

「2代目の社長が、自分の足で市場を開拓してキャッシュを残せる無敵の仕組み」として、親子が納得する形でバトンを渡してあげることです。

だからこそ、僕たちのところへ事業承継を控えた後継者の方が相談に来られた際は、

ビジネスモデルキャンバスなどのフレームワークを使って、

会社の設計図を理解するところから始めます。

その設計図と、今の試算表を照らし合わせて、今後の方針を決めていくわけです。

会社の設計図と、数字という客観的なデータ(ファクト)を親子の共通言語にすることで、

先代の「センスと経験」をロジカルな経営戦略へと変換し、

2代目が自らの力で新しい取引先を開拓できるまでの「野生の牙」を、引き継ぎの期間中に一緒に磨き上げていくのです。

「最近、紹介の手が少しずつ減ってきて、先々の売上が不安だな……」

「偉大な先代の跡を継ぐことになったけれど、正直、何から手をつければいいか分からなくて不安だ」

そんな、言葉にできない次世代へのバトンパスのプレッシャーや、親子間のすれ違いを抱えているなら、

その大きな塊を一人で背負い込まずに、僕の前でそのまま吐き出してください。

先代が命がけで守ってきたその「高い価値」を、

次の世代がサバンナで生き抜くための「最高の仕組み」へと、

僕たちが一番近くで丁寧に組み立てていきます。

 

Growth(成長の)Side(隣に)。

あなたのこれまでの泥臭い努力を次の世代の確かな未来に変えるために、僕はこれからも一番近くで、大切に守り続けます。